HMBとは別名「β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸」といい、必須アミノ酸である「ロイシン」の摂取により体内で作られる成分です。
ロイシンが筋肉合成に有用であることは比較的知られていますが、これはロイシンの摂取により体内でHMBが生成されるからだと考えられています。
HMBは1996年、米国アイオワ州立大学の研究により、筋肉の増強や損傷を抑制する効果があることが報告され、米国のサプリメント業界では一大ブームとなりました。
また、日本でも2010年からサプリメントなどの機能性食品として販売されるようになりました。
厚生労働省にも、筋肉のタンパク質合成に重要な役割を果たす成分として紹介され、食薬区分リストに追加されています。また、高齢者におけるサルコペニア(全身の筋力低下および身体機能の低下)の予防や改善にも有効であることが明らかになっています。
HMBを食品から摂る場合は、ロイシンが多く含まれる食品「肉、魚、豆類」などを選ぶことで摂取できます。しかし、食品から摂取したロイシンのうち、HMBに変換されるのはわずか5%であり、1ℊのHMB を生成するには、20ℊのロイシンが必要になります。
HMBは補うことが難しい希少な成分なので、近年では効率よくHMBを摂取できるものとしてサプリメントが急速に支持を集めています。
また、主に筋肉をつくりだすことに効果を発揮することから、スポーツ選手やボディービルダーの方などに、サプリメントを使用する方が多く見られるようです。
HMBの効果・効能
2010年から日本でも機能生食品として販売されるようになったHMB。
比較的新しい成分であることから、その効果について気になる方も多いのではないでしょうか。
現在、明らかになっているHMBの効果・効能には以下のようなものがあげられます。
- 筋肉の増強
- 筋肉の分解を抑制する
- 筋肉の疲労回復
- サルコペニアの予防
- 脂肪量の減少
筋肉の増強
HMBを摂取すると、mTOR(エムトア)と呼ばれる「シグナル伝達経路」が活発になることが分かっています。mTORは細胞内の刺激伝達を担う働きがあり、これが増加することでたんぱく質合成が活性化され、筋肉量が増加すると考えられています。
海外の実験では、運動する人において1日に1500~3000mgのHMBを補給することで、筋肉増強に効果があったことが報告されています。
1500または3000g HMB /日の補給は、運動誘発性のタンパク質分解および/または筋肉の損傷を部分的に防ぐことができ、耐性訓練に伴う筋肉機能のより大きな利益をもたらす。
また、1日に1500mg摂取したグループよりも3000mg摂取したグループの方が筋肉肥大に効果を発揮したことから、筋肉増強を目的にHMBを摂取する方は「1日に3000mg」ほどの摂取が望ましいとされています。この実験では、1日3000mg摂取したグループの筋肥大の伸び率は、未摂取群の約2倍という大きな効果を発揮しています。
ただ、注意していただきたいのは、HMBを摂取するだけでは筋肉増強の効果は得られないということです。多くの筋肉増強に対する臨床試験は「トレーニング・栄養補給・休養」を組み合わせることによって効果が確認されています。
筋肉の分解抑制
HMBには筋肉を分解する「ユビキチンプロテアソーム」経路の働きを阻害する効果が明らかになっています。これにより、筋肉の分解を防ぎ、トレーニングで増やした筋肉を維持することができます。
また、ケガなどによってトレーニングの中断期間があっても、HMBを定期的に摂取することで筋肉量を落とさずに再びトレーニングを行うこともできるでしょう。
実際に、海外の研究では、ハードなトレーニング後にHMBを摂取することにより、筋肉の損傷レベルを表す「クレアチニンキナーゼ」や「乳酸脱水素酵素」の値が有意に低下することが報告されています。
また、このような効果があることから、医学会では、筋肉のカタボリック(異化作用)を防ぐためにも利用されています。カタボリックとは、体内のエネルギーが足りないために、筋肉量が減少してしまう状態のことをいいます。現在でも、糖尿病やエイズなどの筋肉が減少してしまう病気において、HMBの効果が期待され、研究が進んでいます。
筋肉の疲労回復
HMBは、トレーニングによる筋肉の損傷を最小限に抑え、筋肉の疲労回復を早める効果があります。また、この効果は激しいトレーニングによる筋肉痛を軽減させることにも役立つと考えられています。
HMBを摂取することで体内のコレステロールが生成されることがわかっています。コレステロールは細胞を覆っている細胞膜を構成する非常に重要なものです。そして、それは筋肉の細胞においても同じように言えます。
また、トレーニングによって筋肉の細胞がダメージを受けると、コレステロールの合成が上手くいかなくなり、ホルモンの合成などにも悪影響を与えてしまいます。
HMBにはコレステロールを合成することにより、筋細胞膜を安定させる作用があり、トレーニングによるダメージを軽減させます。筋肉の回復が速まることで、いつもより強度の高いトレーニングを行うことができるので、筋肉増強にも効果的でしょう。
サルコペニアの予防
HMBは、高齢者における「サルコペニア」の予防にも効果があることが明らかになっています。
サルコペニアとは、加齢により筋肉量が低下し、筋力や身体能力が低下した状態のことをいいます。
サルコペニアが進行すると、歩行などの日常生活の動作に支障が起こり、生活習慣病などの発症にも繋がると考えられています。
2015年に厚生労働省は、サルコペニアの傾向にある高齢者がHMBを摂取すると、筋肉量減少を防ぎ、症状を緩和できることを発表しました。
実際に行われた実験では、75歳以上の女性の高齢者155人が1日に3000mgのHMBサプリを摂取することで、筋肉量が増大し、歩行速度が改善されたことが報告されています。※1
脂肪量の減少
HMBには、筋肉量を維持しながら、脂肪量を減少させる効果があることがわかっています。
ボディービルダーや体重別階級があるスポーツにおいては、筋肉量を維持して、脂肪量を落とすことが求められます。しかしながら、カロリー制限をすることにより筋肉量も減少しやすい状態になります。
実際に行われた研究では、HMBを摂取することにより、筋肉量を維持できるとともに、脂肪量が減少しやすくなることが示されています。実際に、女子柔道選手を対象にした調査では、カロリー制限に加えてHMBを摂取した被験者は、体脂肪率が有意に低下したことが報告されています。
HMBの脂肪量の減少に対するメカニズムは明らかになっていませんが、減量中のアスリートの方や、脂肪を落とすためにカロリー制限をしている方などには役立つと考えられるでしょう。
参考文献
- ※1高齢者 - 厚生労働省
HMBの副作用
HMBは、アミノ酸を摂取することによって生成される代謝物なので、過剰摂取しないかぎり副作用の心配はないと言われています。
サプリメントから摂取する場合でも、1日に3000mgまでの摂取は8週間まで副作用はみられなかったようです。また、6000mgを1ヶ月間摂取した場合でもコレステロール、ヘモグロビン、白血球、血糖などに悪影響はなかったことが報告されています。
ただ、筋肉増強に効果が期待されるHMBですが、多く摂りすぎてしまうとそれが逆効果となり、筋肉量を減少させてしまうことがわかっています。
実際に8週間に渡り行われた実験では、3000mg摂取したグループでは筋肉量が増加したものの、6000mg摂取したグループでは筋肉量が減少してしまったことが報告されています。
37人の若い男性を3つのグループに分けて、HMB未摂取・3000mg摂取・6000mg摂取で8週間、筋トレを行った。その結果、3000mg摂取したグループの筋肉量の増加が顕著だった。しかし、HMBを全く摂らなかったグループは筋肉量が微増、6000mg摂るグループでは筋肉量が減少した。
参考文献:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass.
HMBのサプリメントを使用することは、効率的に筋肉をつけることに役立ちますが、効果を期待するあまりに過剰摂取することは逆効果を招く可能性があるのです。
使用する際には、商品に書かれてある用法や容量を守ることを心掛けましょう。
過剰摂取にならない推奨摂取量とは
厚生労働省は高齢者において、「1日に3000mg」のHMB摂取を推奨しています。
また、1500mg~3000mgまでは、筋肉を分解抑制する効果が上昇したという報告がありますので、身体づくりの為に摂取する方は「1日1500mg~3000mg」の間を目指して摂取するといいでしょう。