亜鉛とは、味覚の維持や免疫力の強化など、人間の健康維持に欠かすことのできない必須ミネラルのひとつです。
たんぱく質やDNAの合成、免疫機能の調節、細胞の新陳代謝などに働きかけ、約100種類もの酵素と深く関わっています。
亜鉛は全ての細胞に存在し、新陳代謝を助ける働きもある為、「妊娠や授乳」「成長期」「傷口の治癒」など、新しい細胞がたくさん必要な時期には、より多くの亜鉛が必要になります。
また、血糖値を下げる働きのある「インスリン」を構成する成分でもあり、赤血球や白血球の細胞膜を安定させる作用もある為、日本人に多いとされる「2型糖尿病」の予防や、進行を抑える効果も期待されています。
体内で様々な働きしている亜鉛ですが、成人の体内に含まれる量は2g程度と少なく、不足しやすい微量ミネラルのひとつでもあります。
現代の日本人の食生活では、亜鉛不足が問題になっており、亜鉛が不足すると「味覚障害」や「食欲不振」「皮膚炎」といった症状が起こることがわかっています。
高齢になるにつれ、亜鉛の必要量は低下していきますが、吸収率も低下してしまう為、亜鉛の上手な摂り方を知っておくことが健康維持には大切です。亜鉛は生命維持に欠かせない必須ミネラルのうちの1つですが、体内で合成されないため、毎日の食事やサプリメントから摂取する必要があります。
亜鉛の効果・効能
亜鉛の働きは人体の多方面に渡って関わっており、健康的な身体を維持する為には必要不可欠な栄養素です。体の不調に悩んでいる人や、お肌の調子が悪い人などは、亜鉛を摂取することで改善されることもあります。
亜鉛の効果・効能には、以下のようなものが挙げられます。
免疫力の向上
「風邪を引きやすい」「疲労がとれない」といった体の不調を感じることはないでしょうか。
健康的な身体を維持するためには、ウイルスなどから体を守る免疫機能が重要な役割をしますが、亜鉛にはその免疫細胞の働きを促す作用があることで知られています。
そのメカニズムについては近年まで解明されていませんでした。
ですが、2014年に理科学研究所で行われた研究によると、細胞内に運ばれた亜鉛が、免疫を獲得した細胞を守る働きをすることが明らかになっています。
実際に亜鉛の獲得免疫応答への影響を調べた研究では、細胞まで運ばれた亜鉛が細胞死(アポトーシス)を抑制し、細胞受容体の情報伝達を調節することによって、細胞の免疫力を高めています。
また、海外の研究では亜鉛の欠乏がさまざまな病気の原因となるため、免疫機能の中でも中心的な役割を果たす栄養素だということがわかっています。
たとえ軽い亜鉛不足だったとしても、細菌などを攻撃する細胞の活性を低下させる可能性があります。※1
正常な味覚を保つ
舌には甘みや苦みなどを感じとる「味蕾(みらい)」という器官があり、そこで感じた味を脳に伝達することで味覚を感じることができます。亜鉛はこの「味蕾」にも深くかかわっています。
味蕾にある数十個の「味細胞」は、細胞分裂が盛んに行われており、その代謝を助ける亜鉛が不足すると、細胞の再生ができなくなります。
味細胞の寿命は短く、たえず新しく生まれ変わる必要がある為、亜鉛不足によって感覚細胞としての機能ができなくなると、味覚障害を引き起こす原因になるのです。
また、亜鉛は唾液腺にある「ガストリン」というホルモンの構成にも関わっている為、それが味覚受容器に正常な働きを果たしているとされています。
アメリカで行われた食欲不振を訴える患者20名を対象にした実験によると、亜鉛を与えた95%の患者は味覚が改善し、食欲不振も改善されたという結果がでています。※2
もし、「味が深く感じられなくなった」と感じた時は、亜鉛不足のサインかもしれません。
肌状態を良好に保ち、自然治癒力を高める
亜鉛には体の皮膚や粘膜の状態を良好に保つ効果があることがわかっています。
抗酸化作用を持ったビタミン(A.C.E)と、亜鉛をはじめとするセレンや銅などのミネラルは、細胞組織に引き起こされる潜在的なダメージに働きかけ、免疫細胞の機能を調整し、お肌の状態を正常に保つことができます。
普段から不足しがちな亜鉛は、ビタミン類などの吸収にも影響する為、肌のうるおいや、ハリを作るのにも欠かすことのできない栄養素だといえるでしょう。
また、亜鉛は細胞の働きの中心となるDNA修復機能や、組織の不具合をおぎなう再生能力機能に関わっている為、この働きによって、自然治癒力を高めることができます。
風邪予防・改善
海外では一般的な風邪予防の為に、医者にかかる以外の方法として、店頭での亜鉛の使用が大幅に伸びています。
大人の風邪の原因の多くは「ライノウイルス」に感染することで起こると言われていますが、亜鉛は、鼻粘膜内でのライノウイルスの結合を直接攻撃する効果がある為、炎症を抑えることによって、風邪の症状を軽減させます。
これによって、ウイルスの潜伏期間を短縮できるという仮説も立てられています。
また、亜鉛には粘膜の健康を保つビタミンAを体の中に運ぶ作用があるので、喉の痛みや鼻水といった風邪の症状をやわらげる効果が期待できます。
亜鉛はビタミンAとともに、白血球が体内の細菌を攻撃するのを助けるという重要な働きもしているので、亜鉛を日常的に摂取することが、風邪の症状を軽減させることにつながると言えるでしょう。
下痢予防
まず、下痢を引き起こす原因として、ミネラル不足による腸内環境の乱れがあげられます。
私たちの腸では、食べた物の水分を吸収して、便を固形にし、体外に排出するというサイクルがありますが、腸の働きが鈍ると水分をうまく吸収することができなくなり、食欲不振や下痢といった症状を引き起こすのです。
東南アジアなどの発展途上国の栄養不良の子供が、亜鉛を摂取したことで下痢症状が緩和されたという報告があります。
実際に、5~15ヵ月に渡り毎日の亜鉛補給を実施した試験では、下痢の発症率の軽減は8%~45%であるということがわかっています。
他にも、同じような結論のエビデンスがいくつか報告されていますが、欧米先進国などの亜鉛が十分に摂取できている子どもや、大人に対しての試験は報告されていないようです。
ですが、世界保健機構ユニセフは、現在も小児の下痢症状予防に亜鉛補充を取り入れており、亜鉛の下痢予防効果は大きいと考えられます。
参考文献
- ※1Zinc and immune function: the biological basis of altered resistance to infection.
- ※2Hypogeusia and zinc depletion in chronic dialysis patients.
亜鉛の副作用
亜鉛は比較的毒性が低いミネラルなので、大きな副作用が起きるリスクは低いと言われています。また、仮に過剰摂取が原因で、体内に亜鉛が多くなったとしても、余分な亜鉛は便や尿として体外に排出されるようになっています。
しかし、通常の食事で摂取する量であれば問題ありませんが、サプリメントなどで一時的に過剰摂取した場合などには以下のような副作用が出る可能性が考えられます。
- 頭痛・発熱
- 吐き気
- 嘔吐
- 貧血
- 食欲不振
吐き気
実際に海外のある症例報告では、85錠(4g)のグルコン酸亜鉛を摂取した男性が、摂取から30分以内に重度の悪心と吐き気を経験したという報告もあるため、短時間に大量の亜鉛を摂取することは身体にとって有害だと考えられています。
尿路系の機能障害
また、こちらも海外の研究結果ですが、亜鉛の過剰摂取は、老廃物を尿として排出する「泌尿生殖器(ひにょうせいしょくき)」に悪影響を与えるとし、尿路系の機能に問題のある入院患者の増加と関係しているとしています。※1
食欲不振・貧血
食欲不振や貧血などは、亜鉛が鉄分や他のミネラル成分の吸収を低下させてしまう為、起こってしまいます。また、亜鉛が酵素の働きを妨げてしまうことで、脂肪の分解がうまくできずに、下痢や吐き気をもよおしてしまう原因となります。
これらの副作用の他にも、亜鉛をサプリメントなどで過剰摂取することで「急性亜鉛中毒」を引き起こす危険性もあり、「吐き気、発熱、腹痛、倦怠感」などが主な症状です。
これらは一般的な体調不良の症状と似ている為、亜鉛中毒だと気づきにくいのも特徴です。
サプリメントを使用して、亜鉛を摂取することは悪いことではありませんが、決められた容量を守り、過剰摂取にならないように注意しましょう。
過剰摂取にならない亜鉛の上限量とは?
厚生労働省が定めている亜鉛の一日の耐用上限量(摂取しても健康に害がないとされている量)は「成人男性で40~45mg」「成人女性で35mg」です。
また、一日の推進摂取量としては「成人男性で10mg」「成人女性で8mg」としています。
一例をあげると、卵一個に含まれる亜鉛の量は4.2mgですので、成人女性であれば一日に卵を二個食べると、推進量を満たすことができます。
普通の食生活をしているのであれば、過剰摂取に関してはあまり心配ないと考えられますが、日本で定められている一日の推奨量を目安に、過剰摂取にならないよう気をつけましょう。
亜鉛の食事摂取基準(mg/日)
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
1~2(歳) | 3 | - | 3 | - |
3~5(歳) | 4 | - | 4 | - |
6~7(歳) | 5 | - | 5 | - |
8~9(歳) | 6 | - | 5 | - |
10~11(歳) | 7 | - | 7 | - |
12~14(歳) | 9 | - | 8 | - |
15~17(歳) | 10 | - | 8 | - |
18~29(歳) | 10 | 40 | 8 | 35 |
30~49(歳) | 10 | 45 | 8 | 35 |
50~69(歳) | 10 | 45 | 8 | 35 |
70以上(歳) | 9 | 40 | 7 | 35 |
まれに一日の耐用上限量を超える日があっても、すぐに副作用が起こるという可能性は低いでしょう。ですが、亜鉛を継続して過剰摂取してしまうと、前述したような体の不調を引き起こす要因となりますので、注意しましょう。
参考文献
- ※1[Voiding disturbance in elderly males examined by prostate mass screening. Gunma Urological Oncology Study Group].